ソファの価値を決めるのは、外観だけではありません。むしろ重要なのは座り心地であり、その善し悪しを決めるのがカバーの下にあるクッションなのです。 普段は目にすることがかなわないソファのクッション、実はさまざまな種類があることをご存知ですか? ソファにおけるクッションの役割は、まさにソファがソファたるための基底となっています。座面と背もたれによって構成されるソファは、座面の下にあるクッションの柔らかさや素材によって座り心地が左右されるわけです。 まさに、ソファの本質を決めるのがクッションというわけですね。 座る人の体重を支えるクッション部分について知ることは、ソファを選択するときにも大いに役に立ってくれます。なぜならば、ソファのデザインやカバーの色を決める以前の問題として、まず座り心地こそが最重要事項であるためです。 まず、ソファのクッションの素材として最もよく耳にするのがウレタンではないでしょうか。 ウレタンの本来の名称は「ポリウレタン」。 ポリウレタンは、1937年にドイツの化学者オットー・ベイヤーによって考案された合成樹脂です。発泡剤を混ぜることによって、素材の密度が調整できるという特徴があります。 ポリウレタンの密度が高くなりすぎると耐久性が優れるいっぽうで、クッションは固くなるため好みが分かれてきます。 しかしメリットも少なくありません。 ポリウレタンのクッションは、近年特に人間工学を基礎にしてさまざまな技術が生まれています。 単一の密度のウレタンクッションを使用するのではなく、柔らかさが異なるウレタンクッションを層にすることで、座り心地と耐久性というソファ購入時のポイントとなる点に対応が可能になってきました。 通常は、最低部に密度の高い硬めのウレタンが配置され、上部は柔らかめのタイプが使用されます。 最近は、エコロジカルな材料を使ったウレタンクッションも欧米の家具見本市で紹介されるようになりました。人工の素材であるウレタンは、値段もピンからキリまであります。 安価なソファのウレタンはへたりやすく、耐久性に問題があることも。 型崩れしにくいウレタンクッションを使用したソファは、ソファに座って過ごす時間が多い人にはおすすめのタイプです。 素人目にはすべて同じ素材に見えるウレタンクッションですが、実は厳密に数字で表されます。 一般的に、ソファに使用するウレタンは13.8kg/㎥~30kg/㎥とされています。 ただし、15kg/㎥以下の密度のウレタンは、かなり柔らかく体が沈む感じは否めません。 そして、高級ソファに多い高密度のウレタンとなると、25kg/㎥~45kg/㎥が標準となってきます。 耐久性を重視する場合には、メインとなるウレタンをスポーツ競技などに使う50kg/㎥以上の密度のタイプにすることもあり。 あまり高密度になると固くなりすぎて座り心地が悪くなる可能性もあるため、この辺りはブランドが持つ技術力がモノをいう分野というわけですね。 フェザークッションは、その名の通り鳥の羽が使用されたクッションを指します。 掛布団などに使用されるタイプは、ダウンと呼ばれています。 ダウンは、羽軸がないフワフワとした素材です。いっぽう、ソファに使用されるフェザークッションは弾力性も要するために羽軸のあるタイプが用いられているのです。 これが、フェザーと呼ばれている素材です。 フェザーをクッションの素材として用いるメリットは、自然素材による保温性にあります。また、座ったときのふんわりとした柔らかさもフェザークッションの特徴といえるでしょう。 欧米の高級家具ブランドでも使用されることが多いフェザーは、贅沢感もあるソファを体感できます。 羽は軽いためにクッション内で移動しないようキルティング状になっていることも多く、手ではたくと空気を含んでクッションの形状が戻ることもあります。 フェザークッションのソファは柔らかいのがなによりの身上、そのため長時間座っていると腰が沈んでしまうというのもありますがそれがメリットになるのかデメリットになるのかは座る人の感じ方により変わるかと思います。 それぞれメリットとデメリットを併せ持つウレタンとフェザー。 この2つの素材をミックスして、より実際的なソファを作っているブランドも少なくありません。 フェザーの保温性、復元力の高さを活用し、いっぽうではウレタンの密度を調整しながら柔らかくなりすぎるのを防止するというタイプです。 この場合も、ウレタンのメリットを活用して固さを選択できる場合もあります。 フェザーを主流としてきた海外ブランドも、ウレタンとの混合を使用するケースが多くなってきました。 というわけで、それぞれの特徴をまとめてみました。 ウレタンクッション ・ウレタンの密度によって固さの選択が可能 ・密度や硬度の違うウレタンの重ね方やそれぞれの厚みを変化させて、色々な硬さや座り心地を表現する事が出来る ・反発力があるため、長時間の使用にも向いている フェザークッション ・自然素材であり保温性に優れている ・高級感がある ・身体全体を包み込んでくれるような柔らかさがある ・ コロナ禍によって、家庭における居間の役割も変化しています。 これまでは、仕事や学校を終えた家族が夕食後のひとときを過ごす場所、それが居間でした。ソファを使用する時間も、1日のうちでそれほど多くはなかったかもしれません。 しかし在宅ワークが多くなったここ数か月、ソファで過ごす時間も格段に長くなったお宅も多いと思います。 そうなると、フワフワしたフェザーのソファでゆったりと過ごす贅沢感よりも、座っていて足腰に負担がかからないソファであることが好ましくなってきます。 これまでは気がつかなかったソファのたるみや沈みがストレスに感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。 こうしたライフスタイルの変化に合わせて、ソファはカバーだけではなくクッション部分も交換することも可能です。 その場合も、固さについては修理の業者さんにしっかりと希望を伝えると、好みやライフスタイルに対応した固さのクッションを調達してくれます。 価格や素材に応じて、ウレタンやフェザーのクッションの耐久年数は変わってきます。ソファを購入時に耐久性を重視したとしても、残念ながらカバーと同じくクッションも劣化していくことは免れないのです。 また、カバーやクッションだけではなく、それを支えるスプリングやベルトも年を重ねると傷んでくるため、クッション部分のへたりの有無にかかわらず座り心地が悪くなったと感じることもあると思います。 ソファも人間と同じ、定期的に状態をチェックしてあげることが長もちさせる秘訣といえるかもしれません。 座り心地というものは個人個人の感覚であって、なかなか言葉や数字にしにくいところがあります。 そのために、ソファのクッションとなるウレタンには密度と固さを表現するための数値が存在しているのです。 素人にはわかりにくい単位ですが、ご自分の好みの固さを記憶しておくと、次のソファの購入や修理時に役に立つかもしれません。 また、高級ブランドに多いフェザークッションも近年日本で人気になっています。 自然素材を使った温かさ、これもまた魅力があります。 クッション部分の劣化については、経験のある修理業者に相談して購入時の固さに戻すことも可能ですし、ライフスタイルの変化に合わせて素材を変えるのもよいと思います。 いずれにしても、修理の際にはしっかりと希望を伝えてお気に入りのソファを長く愛用していただければと思います。
それぞれの好みがベースとなる座り心地、それを可能にしてくれるクッションについてご紹介したいと思います。