デザインの国イタリアを代表するソファブランドといえば、まず筆頭にあげられるのがカッシーナでしょうか。 そのカッシーナとともに高級ソファブランドの双璧といわれているのが「ポルトローナ・フラウ」Poltrona Frauです。 カッシーナがミラノを中心としたモダンスタイルで台頭したのに対し、ポルトローナ・フラウはかつて存在したイタリア王室御用達のタイトルをもつ「格」を誇ります。 今日は、そのポルトローナ・フラウの歴史や特徴について記事にしてみました。 サルデーニャ島の職人が起こした企業が王室御用達に サルデーニャ島はカリアリ出身のレンツォ・フラウがトリノに椅子を生産する企業を創業したのは、1912年のことでした。 レンツォは天賦の才に恵まれていたのでしょう。 フラウ社は、1916年にはデザイン誌「Numero」に取り上げられるようになります。 当時としては、最高のマーケティングにも恵まれていた草創期でした。 1919年、当時は品番「128」として登場したのが、ピストイア公爵フィルベルト・ルドヴィーコ・サヴォイア公のソファでした。現在は製作された年を記念し「1919」として知られるこの名品によって、ポルトローナ・ソファは一躍高級ブランドへと邁進するのです。 1923年には、シチリア出身の高名なデザイナー、ヴィットリオ・ドゥクロとコラボしてホテルのインテリアを手掛けています。 そして1926年、ポルトローナ・フラウはイタリア王室から御用達として任命されます。残念なことにまさにその年、同企業を率いてきた創業者のレンツォ・フラウは45歳の若さで早世してしまいます。 跡を継いでブランドを率いたのは、レンツォの妻であったサヴィーナ・ピサーティでした。 彼女の主導で「REX」や「Parlamento」といったソファの名品が次々に誕生します。 戦後、ポルトローナ・フラウは主導権が一族間の間に移動し、本拠地を北イタリアのトリノからマルケ州のトレンティーノへ移しています。 数々の受賞歴、そして世界へ 戦後のポルトローナ・フラウは、デザイン界の巨匠たちとのコラボで頭角を現していきます。 このころから、過去の古典的なスタイルからの脱却を試みたのかもしれません。なかでもジオ・ポンティがデザインした「Dezza」はTecnhotelの大賞に輝き、大きな注目を集めました。 1968年には建築家ルイージ・マッソーニのデザインによる円形のソファ「Lullaby」が誕生。 1980年代には、ミンモ・カステッラーノをブランドに迎えて再スタイル化をはかりました。ピエールルイジ・チェッリ、マルコ・ザヌーゾなどなど、一流のデザイナーとコラボレーションを続け、ポルトローナ・フラウは着実に成長していきます。 90年代に入って、ニューヨークに初めての旗艦店をオープンします。1992年、ケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストンが共演した映画『ボディガード』のなかで、ポルトローナ・フラウの「Vanity Frau」が登場、その名は国際的にも高まりました。 勢いが止まらないポルトローナ・フラウは、1996年にミラノのピッコロ劇場の観客席の椅子をデザイン、さらにストラスブールにある欧州議会にも椅子を納入しています。 21世紀に入ってからも国際的な盛名は衰えず、2010年にはロサンゼルスのウォルト・ディズニー・コンサート・ホールの観客席をデザイン。メイド・イン・イタリーのパワーを誇示し続けています。 高級客船や高級車の椅子も! 椅子に関しては第一人者となったポルトローナ・フラウは、一般的なソファとともに富裕層のヨットや日本航空のファーストクラスの客席もデザインしています。 さらに、イタリアが誇る高級車アルファロメオやフェラーリのインテリアもポルトローナ・フラウが請け負いました。 こうした功績をまとめて、本拠地のマルケ州には同社の美術館まで設立され、確かな実力を有するブランドとして、ポルトローナ・フラウは躍進し続けているのです。 レザー品質向上のための専門部門 ポルトローナ・フラウの魅力のひとつに、レザーの質の高さがあげられると思います。 企業の規模が大きくなっても、同社は生産過程において人の手を最大限に活用するにとどまらず、マテリアルの品質向上にも余念がありません。 とくに、ソファの顔ともいえるレザーについては過去のアーカイブを保管し、品質を向上させるための研究開発センターが設けられています。 慢心せずに絶え間ない挑戦を続けることが、ブランドが常に躍進を続ける理由となっています。 ポルトローナ・フラウの人気モデルは? 1912年の創業以来、デザインの歴史に残るアーティスティックなソファを生み出してきたポルトローナ・フラウ。その中からいくつかの代表的なモデルをご紹介したいと思います。 ・巨匠ジオ・ポンティが残した遺産「DEZZA」 1960年代にデザイン界の巨匠ジオ・ポンティが世に送り出したDEZZA。 半世紀も前のものとは思えないほど斬新な美を誇るDEZZAは、現在もポルトローナ・フラウの人気モデルとして定着しています。 一見すると革命的なモデルなのに、どんな部屋とも美しく融合する普遍性がその人気の秘密。レザーと組み合わされるウォールナッツの木部も絵になるソファです。 DEZZAはこちらからご覧になれますのでどうぞ。 https://www.poltronafrau.com/ja/dezza ・創業者によるクラシカルなデザイン「CHESTER ONE」 サルデーニャ島出身の朴訥な青年であった創業者レンツォ・フラウ、サヴォイア王家ゆかりの地トリノで成功してのちにデザインしたのがCHESTERシリーズです。 1912年、同社の最初のカタログに英国のエドワード朝様式の流れをくむ古典的なソファとして掲載されました。その延長上に、数人掛けのCHESTER ONEが登場。現在は、美しい湾曲を描くCHESTER LINEもあり。古き良き時代を思わせる古典的なラインなのに、なぜかモダンな空間にもマッチするマジックを有した名作です。 CHESTER ONEはこちらのサイトからご覧になれます。 https://www.poltronafrau.com/it/chester-one ・故ジョン・F・ケネディ大統領へのオマージュシリーズ「KENNEDEE」 2011年にポルトローナ・フラウがデザイナーとして迎えたフランス人ジャン・マリー・マッソーによって誕生したのが、故ケネディ大統領へのオマージュシリーズです。「John-John」と並び発表された「KENNEDEE」は、新世紀を生きる同社が今後の行方を示したようなダイナミックなデザインとなっています。また、座り心地のよさもブランド力を駆使して結集したテクノロジーの粋。一回り小ぶりの「KENNEDEE JR」とともに人気を博しています。 KENNEDEEをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。 https://www.poltronafrau.com/ja/kennedee ・王室御用達への道を切り開いた「1919」 1919年にサヴォイア王家の一人ピストイア公爵のために考案されたアームチェア「1919」。 そもそも社名の「ポルトローナ」とはイタリア語で1人掛けの椅子を意味し、同社がいかにこのカテゴリーにこだわっているかがわかるというものです。 1919は優美でありながら鼻につかない自然体のデザインがなによりの魅力。これひとつ部屋に置くだけで、全体が引き締まるような格を有しています。 2019年には、1919の誕生100周年を記念して「2019」が誕生しています。1919のスピリットはそのままに、21世紀に即したデザインになっています。 1919と2019は以下のサイトからご覧になれます。 https://www.poltronafrau.com/ja/1919 https://www.poltronafrau.com/ja/2019 最後に デザインの国として不動の地位を保持するイタリア。 家具の分野においても、その人気は群を抜いています。 イタリア家具の世界で、カッシーニと並ぶ二大巨頭として不動の地位を築いたポルトローナ・フラウは、ブランド力に恥じない技術とデザインで世界中のハイソサエティから希求されてきました。 世界各国のシアターの観客席、飛行機のファーストクラス、フェラーリをはじめとする高級車の座席をデザインするなど、外観だけではなく座り心地についても万人が認める実力を持つブランドです。 ステイタスとしても嫌味なく、あらゆる空間に美しく納まるポルトローナ・フラウのソファ、ケアを続けてあげる事で永い間使っていけるのではないでしょうか。