まず素材ありき。 アメリカはノースカロライナ州中西部の都市ヒッコリーは、古来良質な木材の生産地として有名ですが、この地の上質な木材から生まれた家具ブランドが「ヒッコリー・チェア」になります。 その名の普及度は特に突出したものではありませんが、時代を超えて愛され続ける家具の条件をすべて備えているブランドといわれています。 社のモットー「タイムレス」をそのまま体現したヒッコリー・チェアについて、今日はご紹介していきたいと思います。 100年以上の歴史を誇るヒッコリー・チェア 広大な森が続くノースカロライナ ヒッコリー・チェアがノースカロライナに誕生したのは1911年。当初の規模は非常に小さく、オーダーメイドで生産するダイニングチェアが主要な製品でした。 創業当時から変わらないヒッコリー・チェアの特徴は、2つの要素を完全なバランスで結びつけるセンスにあるといわれています。 その2つの要素は「クラフトマンシップの確実性」と「近代的な製造業における有効性」。 創業から数十年、その質実な気風は世界の富裕層の認められるところとなり、ヒッコリー・チェアの名は業界内のみならずより良い家具を求める人々の間でもファンを増やしていったそうです。 ヒッコリー・チェアはまた、高名なデザイナーと組んでタイムレスな製品の品ぞろえという点でも努力を重ねてきました。 こうしたヒッコリー・チェアの多くは、アンティークの要素を含んでいるためその分野でも絶大な人気を誇っています。 まさにタイムレスな魅力が、このあたりにもうかがえます。 現在も、家具の生産過程の90%はノースカロライナのヒッコリーで行われているそうで、創業当時の精神も脈々と受け継がれているのです。 ヒッコリー・チェアの魅力とは ヒッコリー・チェアの最大の魅力、それはノースカロライナ産の良質な木材のメリットを最大限にまで引き出す職人技とデザインにあります。 厳選された木材は研磨され、成形され、組み立てられる工程で、伝統的な技と最新の技術双方がほどよいバランスで施されていきます。たとえば、多層仕上げの部分は手作業で行われますが、ベニヤに関してはレーザー加工が用いられます。顧客それぞれのヴィジョンに応えるという同社のコンセプトも魅力のひとつで、ヒッコリー・チェアは家具の世界で基準となるべき品質を誇る企業といえるかもしれません。 また、一流企業のあかしとして環境への配慮も忘れていないことも公式サイトでうたわれています。 ヒッコリー・チェアのコレクションとデザイナー ヒッコリー・チェアがインスピレーションを得たといわれるアメリカのプランテーション ヨーロッパの家具メーカーが次々と近代的なデザインを発表するいっぽうで、ヒッコリー・チェアは18世紀から続く家具の伝統を引き継ぎ続けています。同社の代表的なコレクションやデザイナーをご紹介いたします。 アンティークとなってもなぜか古臭くないという、ヒッコリー・チェアの稀にみるセンスが発揮されたのが1941年に発表されたジェームズ・リバーコレクションです。 バージニア州にあるジェームズ川沿いには、18世紀にこの地に移住してきた人々の住まいや農場(プランテーション)が残されていました。 この様式を踏襲すべく、当時の家具の洗練されたライン、アレゴリー的な装飾などなどを用いています。 とはいえそこは20世紀の家具、18世紀の家具のコピーには終わらず、近代的でフレッシュなコレクションとしてよみがえったのです。 旧世界と新世界を融合させたジェームズ・リバーコレクションは、業界内でも最も息の長いコレクションのひとつに数えられています。半世紀以上も人気を誇り、世代交代する家族の中でも受け継がれるタイムレス感、まさにヒッコリー・チェアの面目躍如といったところでしょう。 ジェームズ・リバーコレクションは、こちらのサイトからご覧になれます http://www.hickorychair.com/Furniture/CollectionAllItems.aspx?CollectionID=500033 ヒッコリー・チェアの顔といってもよいデザイナーの一人がスザンナ・キャスラーです。 アトランタ出身の彼女、フランスへのこだわりが強いことでも知られています。アメリカ南部とヨーロッパの感性をミックスしたキャスラーのデザインは、温かくて居心地のよい空間を作り出します。 ヒッコリー・チェアの特徴でもある力強さのほかに、女性らしい優しさ、丸みを帯びたラインが魅力的です。 2018年、スザンナ・キャスラーはこれまでの集大成として「パリ・コレクション」を発表しました。 フリーマーケットをのぞいてインスピレーションを得るのが大好き、という彼女らしいさまざまなスタイルの折衷でありながら、空間にはピタッと収まるマジックを有したシリーズです。 スザンナ・キャスラーがデザインした家具は、こちらのサイトからご覧いただけます。 http://www.hickorychair.com/Furniture/CollectionAllItems.aspx?CollectionID=500055 人種のるつぼアメリカのブランドであるヒッコリー・チェアとコラボするデザイナーには、ボーダレスの魅力を持っている人が少なくありません。 その一人がレイ・ブースです。 アラバマ州出身で、オーバーン大学の建築学科を卒業したブースは、その後ニューヨークでジョン・サラディノなどのデザイナーと交誼を結び、モダンデザインをものにしました。 現在はナッシュビルとニューヨークの両都市を行き来しつつ、ベストセラーとなった「Evocative Interior」を上梓。「喚起するインテリア」の名のごとく、刺激的で美しいデザインは各国でさまざまな賞を受賞しています。 2019年からヒッコリー・チェアとコラボしているブースの作品は、円熟期を迎えている彼の手腕がこれでもかと反映されている家具ばかり。 今後のコレクションが楽しみです。 レイ・ブースの作品は以下のサイトからどうぞ。 http://www.hickorychair.com/Furniture/CollectionAllItems.aspx?CollectionID=500074 黎明期の美を永遠に刻むコレクション「1911」 2011年に創業100年を記念して登場したコレクション「1911」。 意図的に懐古調を演出しつつも、21世紀の家屋にふさわしい機能性やデザインも組み込んだ斬新なシリーズです。 創業当時のスピリットはそのままに、100年の間に培われたヒッコリー・チェアのテクノロジーも象徴するため、職人たちの気負いも大変なものであったそうです。このコレクションは、同社の成長の記念碑であることを示すように100%の工程が創業の地ヒッコリーで行われています。 モダンなデザインがもてはやされる風潮がある近年、独自のスタイルを貫くヒッコリー・チェアの心意気が見えるコレクションといえるかもしれません。 1911コレクションはこちらからご覧いただけます。 http://www.hickorychair.com/Furniture/CollectionAllItems.aspx?CollectionID=500059 ヒッコリーの地でも愛され続ける企業 ヒッコリー・チェアは、世界的な企業に成長した現在も故郷であるヒッコリーに根を下ろし、地元の人々にも愛されているブランドです。 世界中の人からは「ヒッコリー」と呼ばれることが多い同社、当のヒッコリーの街では「ザ・チェア」と呼ばれて親しまれているのだそうです。ヒッコリー・チェアの原料のサプライヤーとして、ヒッコリーの街も同企業を誇りに思っている証拠かもしれません。実際、何代にもわたる職人たちが、ヒッコリー・チェアで今も家具を作り続けているのです。 2021年には創業110年を迎えたヒッコリー・チェア。 18世紀のアメリカの無邪気さや力強さ、近代的な機能性、年月が培った風格、それらを内包していることが、ヒッコリー・チェアの家具からは感じ取れます。 アメリカンスタイルを貫くヒッコリー・チェアは、その様式を愛する人にとっては憧れのブランドとして今後も君臨し続けることでしょう。