アメリカのブランドでありながら、どこかヨーロッパの香気を感じるソファや椅子。 「ベイカー」Bakerは、アメリカが無邪気に輝いていた時代に誕生し、成長してきたブランドです。 アメリカが世界の大国へと駆け上った時代とともに発展した同社のソファや椅子には、正統派の美男美女が登場するモノクロの映画のような、気品と格が存在しているのです。 今日は、アメリカを代表するエレガントな家具ブランド「ベイカー」についてご紹介いたします。 創業者はオランダからの移民 ベイカーのソファや椅子に感じるのは、ヨーロッパの富豪や貴族たちのサロンにあっても不思議ではない圧倒的なエレガンスです。 それもそのはず、ベイカーの創業者シーベ・ベイカーはオランダ系の移民でした。 1890年にミシガン州で創業したベイカーは、20世紀に入るとアールデコ調の家具で頭角を現し始めます。工業デザイナーであったドナルド・デスキーやケム・ウェーバー、建築家のジョセフ・アーバンをデザイナーとして迎え、ベイカーはアメリカのモダニズムの象徴のひとつとなっていったのです。 1932年、ベイカーはその名を世界に知らしめた「マナーハウス・コレクション」を発表します。マナーハウスとは、英国の郊外に広がる領主たちの邸宅のこと。その名の通り、品格がありながら親しみやすい英国のソファや家具を、ベイカーは20世紀風にアレンジして大いに話題になりました。 その2年後、シカゴで行われたワールド・フェアでは、中国の文化にインスピレーションを得た斬新なシリーズも発表しています。 古典への回帰とモダニズム 20世紀のベイカーを牽引していたのは、創業者の息子ホリス・ベイカーでした。 彼は、個人的にアンティークの家具をコレクションしており、その規模は世界最大ともいわれています。 ホリス・ベイカーはこうしたアンティークの本物に触れ研究を重ね、1940年代に世に送り出したのがパラディアン・コレクションです。16世紀のイタリアの建築家パラディオから着想を経て、イタリア式の新古典主義をテーマに展開したこのコレクションは世界中の富裕層が注目するところとなりました。 また、北欧家具の簡潔さにも注目したベイカーは、1951年からデンマークのデザイナーであるフィン・ユールともコラボしています。 超高級路線へのかじ取り 1960年代から70年代にかけて、世界的な経済成長とともにベイカーはニッチな市場に目を向けます。 それは、エグゼクティブだけを対象にした超高級路線のソファや家具の製造でした。 英国やフランスのプロヴァンス地方をテーマにした高級路線は、世界中のセレブたちの人気を博しました。ベイカーはその趣味を中途半端には終わらせず、コレクションには英国中世から続く名門ベッドフォード公爵家の家具が25個も含まれていることが富裕層への信頼につながったといわれています。 そして、1976年に満を持して登場したのが「ヒストリック・チャールストン・コレクション」です。18世紀から19世紀、ヨーロッパ大陸からアメリカのカリフォルニア州へと移住してきた富裕層の家具を研究しつくした末に、誕生した記念碑的なコレクションでした。 まるで映画のワンシーンのような美しいソファや椅子は、今も根強い人気を誇っています。 20世紀から21世紀へ、止まらないあゆみ ベイカーはあくまでも、ヨーロッパ的なエレガンスにこだわり続けるスタイルを貫いています。 1980年代、まずはイタリアのアレッサンドロ・ガンブリエッリ・ガンバローニャとコラボ、ジョン・サラディーノ、21世紀に入ってからはグッチのショップインテリアを手掛けるビル・ソーフィールド、建築的な美で有名なトーマス・フェザント、アンティークのスピリットが光るローラ・キラー、オバマ大統領時代に大統領府の内装を担当したマイケル・S・スミス、パリで活躍するジャックス・ガルシア、ハリウッドの舞台や映画で活躍するトニー・デュケットなどなど、多才な才能とのコラボが目白押しとなっています。 ハリウッドのアカデミーもメルセデス・ベンツも! こうしたベイカーの確かな実績は、セレブたちが集うさまざまなシーンでベイカーのソファや家具を目にする機会を私たちに与えてくれます。 たとえば、毎年開催されるアカデミー賞のラウンジであるグリーンルーム。2011年と2013年、ベイカーはこのインテリアを依頼され担当しています。 また、メルセデス・ベンツのファッションウィークでは、VIP用のラウンジのインテリアはベイカーの担当。 創業100年を経た今も、あくなき探求心と首尾一貫するエレガンスが高く評価されて、家具業界の第一線で同業者たちを牽引しているのです。 ベイカーの家具、人気のラインは? まるで映画のワンシーンのような美しいスペースを演出してくれるソファ、それがベイカーのブランド力です。 同社の人気のラインを、いくつかご紹介いたします。 ・PRESIDIO アメリカのカリフォルニア州で活躍するバーバラ・バリーによるデザインのソファ「PRESIDIO」。自然界に大きな影響を受けたバリーのデザインは、四季を意識する日本の家屋ともマッチする空気を漂わせています。多忙な毎日の中で、このソファでくつろぐことが「解毒剤」となることをイメージしてデザインされたのだとか。女性らしい安らぎを感じるラインです。 PRESIDIOのソファはこちらからご覧になれます。 https://www.bakerfurniture.com/living/seating/sofas/presidio-sofa-6729s ・King George III Settee これぞベイカーズの真骨頂ともいえるソファ「King George III Settee」。スコットランドでは最も高名なデザイナーの一人ジョン・ゴードンによるデザインのこのソファ、1765年頃にスコットランドで作られたアンティークのソファをモデルにしています。ヨーロッパ大陸の気品が否応なく感じられるこちらのソファ、ベイカーの看板のひとつである「ステートリー・ホームズ・シリーズ」のひとつです。 King George Ⅲ Setteeシリーズをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。 https://www.bakerfurniture.com/living/seating/sofas/king-george-iii-settee-5217s ・French Empire Tub Chair こちらもステートリー・ホームズ・シリーズのひとつとして知られる1人掛けの椅子です。フレンチ風のクラシカルのラインですが、丸みを帯びた背もたれと格式ある柄が特徴。計算しつくされた脚部のわずかな曲線も芸術的です。 French Empire Tub Chairシリーズはこちらからどうぞ。 https://www.bakerfurniture.com/living/seating/chairs/french-empire-tub-chair-bau2009c ・Maharadja Chair フランスで活躍するジャッィス・ガルシアによるデザインのダイニングチェアー「Maharadja」。ガルシアはそもそも、神話的なテーマを愛するデザイナーです。ナポレオン時代の豪華と現代のミニマリズムを、その魔法で融合させてしまうのが彼の実力。同シリーズは、インドの皇帝が使用していた象牙の椅子からインスピレーションを得てデザインされたのだとか。繊細なラインが印象的なデザインながら、座り心地は皇帝なみ。背もたれや脚部の美しい線は見飽きません。 Maharadjaシリーズは下記からご覧になれます。 最後に アメリカに本拠地を置くブランドながら、ヨーロッパよりさらにヨーロッパ的なテイストを格調高くソファや家具に体現させているブランド、それがベイカーです。 安易なモダニズムに流されることなく、創業当初から一貫した古典的な美をソファや家具に反映させてきました。 その運営方針は世界中のセレブリティたちの認めるところ。ハリウッドの世界では、アカデミー賞のグリーンルームにベイカーの家具が使用されることも多々あり。 また、ドイツのメルセデス社も、VIP用のラウンジにベイカーの家具を使用しています。 時代を超越したエレガンスが実感できるベイカーのソファや椅子、いつかリビングで使ってみたいものです。