イタリアンデザインといえば、ミラノを中心とした北イタリアを思い浮かべる方も多いでしょう。
しかしイタリアは、職人芸という点においてはイタリア半島の南から北まで妍を競うブリリアントな工房が軒を連ねています。
ソファだけにこだわり、ソファだけを生産し続けるニコレッティは、陽光まぶしい地中海の気候の中で良質な革を生産することで有名なムルジェ地方が本拠地。
世界的なブランドとして知られるようになったニコレッティについて、今日はご紹介いたします。
- ユネスコの世界遺産マテーラと深い関連のあるニコレッティ
世界70ヵ国でその品質の高さが認められたニコレッティ。その歴史は、40年以上前にさかのぼります。 南イタリアのマテーラは、その特異な町の形状から2019年にユネスコの世界遺産に認定されました。古代からの歴史を持つマテーラで生まれたジュゼッペ・ニコレッティは、普遍的な居心地の良さとはなんなのかを遺伝子的に理解できたのかもしれません。 マテーラは、1950年代にソファをはじめとする家具の生産地として頭角を現しました。1990年代には、世界からも注目を浴びる職人芸と高品質によって、顧客は世界に広がったのです。 17歳でスイスに向かったジュゼッペ・ニコレッティは、革の精製技術だけではなく木工の職人芸も身につけ、さらにチームでいかに効率よく作業を進めるかというノウハウもゲットして、故郷のマテーラに戻ります。 カリスマ性も兼ね備えたジュゼッペ・ニコレッティによって、彼の名字を冠した企業は急成長し、そのスピリットは息子たちにも伝えられたのです。 メイド・イン・イタリーの真髄を内包するソファとして、国際的な名声を得ているニコレッティ。 ここにいたるまで、ニコレッティが金科玉条としてきたいくつかのコンセプトがあります。 まずは、原材料への徹底したこだわりがあげられます。 ソファのデザインを可能にし、さらにあらゆる環境に対応できる原材料を細心の注意をもって選択していることがまずひとつ。 また、各製造段階での厳密なテストと検証も、ニコレッティのソファには欠かせない要素です。これによって、生産されたソファの美観と機能性の保証が可能になりました。また、革新的な機械と伝統的な職人芸をいかに併合させるか、このあたりの微妙なセンスも、ニコレッティファミリーが持つ生得の才能といえるでしょう。 創業者のジュゼッペ・ニコレッティは、ソファのみの生産にこだわってきました。 その彼の言によれば、ソファとはこのようなものです。 「ソファをデザインすることはすなわち、そのソファとともに生きる人の健康に寄与することを意味する。空間、ライフスタイル、快適さのあらゆるニーズに対応し、心理的にも社会的にも家族の中に融合した芸術品であるべきである」 南イタリア出身らしい創業者の、骨太の言葉ですね。 ティーンエイジャーですでに、独立独歩の精神を有していたジュゼッペ・ニコレッティ。 ニコレッティ・ホームはそのため、若手の発掘と育成にも力を入れています。 ニコレッティは、ソファがある居間とは「滞在」する場所であり、もっとも関係の濃い人々と語り合う空間であると強調しています。 これを可能にするソファの開発のために、デザイン専門学校IEDと協力し、「Storia da Divano (ソファから生まれる歴史)」と名づけられたコンテストを開催しているのです。このコンテストから、新世代の声を聞き、彼らが作り出す物語に命を与えようという試みなのです。 それは、単にソファが家具であるという概念を超えた、ストーリー性を持つ新しい家具の生産を意味しています。ちなみに、昨年のコンテストの勝者はトリノの学生でした。彼のテーマは、「相違」。南イタリア出身の祖父の思い出と、北イタリアに住む自分の思いをソファに託しました。 過去の名声に居座ることなく、あたらしい時代へと開けた目を持つニコレッティ、イタリアらしいこうした物語への深い想いも、企業を支える力となっているにちがいありません。 顧客のあらゆるニーズに応えるべく、ニコレッティには数多くのシリーズが存在します。 そのなかでも、特に人気の高いいくつかをご紹介いたしましょう。 ・Itaca http://www.nicolettihome.com/divani/itaca1/ 2010年7月に発表された「Itaca」。当時、スランプ期にあったニコレッティ社に光明を与えたのが、このItacaシリーズです。 ディーラーたちの複雑で矛盾の多い要求に完璧に答えたと称賛されたItacaは、現在もニコレッティ社の売上の第1位を占めています。 それまでの製品の弱点を解決すべく、デザイナーと生産者たちが膝を詰めて話し合った結果生まれた同シリーズ。ニコレッティ社の機能性にデザイン面でも世界市場に躍り出る要素を持つとされ、当時の家具見本市での話題となった記念碑的な作品なのです。 ・Serena http://www.nicolettihome.com/divani/serena1/ 2011年に開催されたミラノサローネの目玉となるはずだった「Serena」は、ミラノへと運搬を開始する寸前に、生産責任者がどうしても納得できずに次の開催へと出展を延期したというエピソードを持つ芸術的なシリーズです。 設計担当者がとことんこだわった計算尽くされたメカニズムは、発表が延期されたことで究極の域に達し、世に出たとたんに生産が追いつかないほどの人気を得た「Serena」。 数々のエピソードやストーリーに彩られて、現在も人気シリーズとして君臨しています。 ・Tesla http://www.nicolettihome.com/divani/tesla1/ 2014年4月に発表された「Tesla」。 キーワードは、「シンプリシティ」と「エレガンス」。そのキーワードをそのまま体現したシリーズとして、発売以来人気を博しています。 すでにベストセラーの仲間入りを果たす勢いのTeslaは、先行していたシリーズ「Itaca」と「Serena」のスピリットを継ぎながら、価格的に商業ベースに乗せることを可能にしたことで、顧客の幅を広げる役割を果たしました。